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岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器外科学
岡山大学病院 消化管外科 肝・胆・膵外科 小児外科

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CLINIC

臨床 消化管外科

食道グループ

希望を持てる最善の治療を、
全ての患者さんに提供します

豊富な経験から患者さんをチームでサポート

食道疾患は、専門性が高くそして総合的な診断と治療を必要とします。当院では食道がんに対する手術症例は年間100例以上であり、また、食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎などの良性疾患に対する手術も積極的に行っております。
これらの成績は全国有数の手術症例数です。食道外科専門医が3名おり、難易度の高い食道癌手術に対しても高い安全性を維持しています。過去10年間の術後30日以内の死亡率は0.1%、在院死は1.1%と、2021年以降の縫合不全率は3%以下と全国平均と比較しても低い数字です。
これらの結果は食道外科医だけではなく、多方面の診療部署が診療に関わり、チーム医療として対応することで実現されています。診療科を越えた医師のつながりとして食道疾患に関わる複数の診療科の専門家が連携して高度な医療を提供するべく、2020年8月に岡山大学病院内に食道疾患センターが開設されました。
また患者さんに大きな負担がかかる食道がん手術には術前の十分な準備と手術後の様々なサポートが不可欠です。医療スタッフ間の連携では患者さんの早期社会復帰を目標として、麻酔科医、看護師、薬剤師、精神科チーム、歯科(歯科医・歯科衛生士・歯科技工士)、リハビリテーション部(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど多職種で構成されるチーム(周術期管理センター:PERiO)によって専門的な治療やケアを行っています。
食道疾患センターホームページ(https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/index350.html

西日本有数の症例数

西日本有数の症例数

豊富な経験を持つ多職種スタッフのサポート

豊富な経験を持つ多職種スタッフのサポート

患者さんに優しい手術を目指して

内視鏡外科学会技術認定医(食道領域で取得)が4名おり、食道癌に対する胸腔鏡手術や食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎に対する腹腔鏡手術を積極的に行っています。
内視鏡外科学会技術認定医(食道領域で取得)が4名おり、食道癌に対する胸腔鏡手術や食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎に対する腹腔鏡手術を積極的に行っています。
食道癌に対する胸腔鏡手術を2011年度に導入し、これまでに800例以上に行ってきました。現在は90%以上がこれらの低侵襲手術です。
2018年度から導入したロボット手術は2022年度には44例施行し、累積200例となっています(ロボット支援下手術の認定医の在籍する認定施設です)。
胸壁破壊のない縦隔鏡手術も導入し、低肺機能など特にリスクが高く、従来ならば手術が不可能であったような患者さんにも安全に手術を行えています。また、近年日本でも増加傾向の食道胃接合部がんに対する低侵襲手術として、胸腔鏡・腹腔鏡併用の「下部食道・胃噴門部切除、胸腔内観音開き法再建」を世界で初めて導入しました。
癌の根治性はもちろん、術後逆流性食道炎を防止するQ O Lに配慮した術式として、全国から注目を浴びています。

最先端の低侵襲治療を提供

最先端の低侵襲治療を提供

胸部食道癌低侵襲治療の割合

胸部食道癌低侵襲治療の割合

高度進行癌に対する諦めない集学的治療

食道がんは気管や大動脈といった隣接重要臓器へ浸潤することがあり、そのような高度進行がんは標準的な方法での治療は困難です。
中国四国の他の施設で「手術は不可能」と言われるような高度進行がんでも、抗がん剤治療や放射線治療を組み合わせることで、手術ができることがあります。
他臓器浸潤を伴う食道がんに対しても、三剤併用化学療法や化学放射線療法に根治手術を組み合わせた集学的治療によって、根治が望めるようになってきています。
またたとえ根治が難しい状況であっても,患者さんの食事をしたいという気持ちに応える治療としてバイパス術やステント挿入など幅広い治療で患者様のニーズに応えます。

高齢者に優しいウイルス治療の開発

私たちは、癌の進行度または全身状態などの理由で手術や抗がん剤が困難な患者さんに対しても最善を尽くせるよう、新規治療法の開発にも積極的に取り組んでいます。より負担の少ない治療法として、岡山大学発の腫瘍融解ウイルス(テロメライシン®)を用いた治療を開発中です。2013年に、世界初となる食道がんに対するテロメライシンと放射線療法の併用療法の臨床研究を開始しました.現在は実用化に向けて多施設共同治験が実施され,登録が終了したところです。今後はこの試験結果をもってテロメライシンの薬事承認が期待されています。

全国規模での新たな治療開発への協力

食道癌の治療において,エビデンスが定まっていない領域について,全国ではさまざまな臨床試験の取り組みが行われております。当院ではウイルス療法以外にも、食道がんに対する新たな集学的治療の開発に向けて,さまざまな臨床試験に参加しています。日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group: JCOG)の食道班に参加し,また企業との連携により,抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬,放射線治療などを組み合わせた臨床試験にも参加しています.全国有数の症例数を持つハイボリュームセンターの責務として,未来の患者さんに対する次世代の治療開発,エビデンス創出に貢献しています.

胃グループ

体にやさしい最先端の手術で
確実に胃がんを治療する

体にやさしい低侵襲手術の追求

現在当科には、日本内視鏡外科学会が定める内視鏡外科技術認定医(胃)が4名在籍しています。体にやさしい低侵襲手術として、腹腔鏡手術や近年ではロボット手術が普及してきていますが、それでも胃がん手術全体に占めるそれらの施行割合は全国的に見ると5割強と報告されています。当科では、進行胃がんや上腹部の手術歴を有する患者さんにもその適応を拡大し、近年ではほぼすべての患者さんに、腹腔鏡手術あるいはロボット手術を行い、安定した成績を収めることに成功しています。今後は、最先端治療であるロボット手術にさらに積極的に取り組み、より安全・確実な手術を目指す予定です。また、麻酔科や管理栄養士と連携して、術後の早期回復や社会復帰のサポート体制を整えています1)

1) Takata N, Kikuchi S et al. Ann Surg Oncol. 2022

胃がん手術における低侵襲(腹腔鏡・ロボット)
手術割合の年次推移

胃がん手術における低侵襲(腹腔鏡・ロボット)手術割合の年次推移

観音開き法(上川法)再建

同門の先輩である上川康明先生(現:松田病院顧問)が考案した、噴門側胃切除後の逆流防止機構を付加した食道残胃吻合法です2)3)。噴門側胃切除後の標準再建法はいまだ確立されていませんが、その最大の問題点は、食道逆流に伴う術後QOLの低下です。観音開き法再建は、その食道逆流防止に優れた機能を有しており、患者さんの術後QOLの向上に寄与する再建法として、現在全国的にも注目され広く普及しています。当科では、医師派遣による直接的な技術支援を行うとともに、積極的な学術活動を通して、標準再建法に向けた取り組みも行っています4)5)6)

2) 上川康明ら.手術.1998
3) 上川康明ら.消化器外科.2001
4) Kuroda S, et al. J Am Coll Surg. 2016
5) Kuroda S, et al. Ann Gastroenterol Surg. 2018
6) Tsumura T, Kuroda S, et al. PLoS One. 2020

観音開き法(上川法)再建

観音開き法(上川法)再建

Closed-LECS(改良型LECS)

腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)は、内視鏡治療と腹腔鏡手術を併用し、必要最小限の胃切除で精密に腫瘍切除を行う治療法で、胃粘膜下腫瘍などに対して施行されています。しかし、従来型のLECSは術中に胃壁の開放を行うため、胃内容物や腫瘍細胞の腹腔内散布の危険性が指摘されています。当科では、改良型LECSとして、胃壁の開放を伴わないClosed-LECSを開発し、主に壁内発育型の胃粘膜下腫瘍に対して施行し、良好な成績を収めています7)。近年では、十二指腸病変や胃がんに対してLECSの適応を拡大し、良好な成績を得ています。

7) Kikuchi S, et al. Gastric Cancer. 2017

Closed-LECS(改良型LECS)

Closed-LECS(改良型LECS)

胃がんの薬物療法

胃がんの薬物療法は、標準的には進行がんの手術後に再発予防目的で行う術後補助化学療法と、切除不能の高度進行がんや再発がんに対して行う化学療法があります。また、まだ標準治療ではありませんが、再発予防目的で手術前に計画的に行う術前化学療法も積極的に行っています。切除不能の高度進行がんに対する化学療法を、当科では年間20例ほどに行っており、良く効いた場合には手術により病変の完全切除を目指します。胃がんの完全治癒を目指しつつ、患者さんに寄り添い、それぞれの患者さんに最適な治療を提供できるよう努めています。

初診時に切除不能とされた高度進行胃がん症例

初診時に切除不能とされた高度進行胃がん症例

肥満症に対する手術

肥満症は診断基準のある一つの疾患概念で、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの疾患を合併している場合、適応基準を満たせば、腹腔鏡を用いて胃を小さくする手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術)の適応となります。手術を行うことで体重が減少すると同時にそれらの合併疾患も改善し、長期的には寿命が延長するという結果が報告されています。当院では医師だけでなく、看護師・薬剤師・管理栄養士・臨床心理士など多職種でチームを形成し診療に当たっています。当院へ初めて受診の際には、かかりつけの先生から、まず腎臓・糖尿病・内分泌内科の外来受診予約をとってお越し下さい。

肥満症手術とその成績

肥満症手術とその成績

大腸グループ

多様化する大腸癌治療への挑戦
〜低侵襲手術、薬物療法から遺伝カウンセリングまで〜

下部消化管外科部門では、寺石文則講師・近藤喜太助教以下4人のスタッフが診療・研究・教育にあたっています。大腸癌(結腸癌、直腸癌)を中心に、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、結腸憩室症から直腸脱などの肛門疾患にいたるまで下部消化管外科全般にわたる診療を行っています。
また、大腸癌治療に関しては、外科診療のみならず、薬物療法や遺伝カウンセリングなど多様な診療を行なっています。

大腸癌手術症例数の年次推移

Closed-LECS(改良型LECS)

大腸チームの特徴

当科では、年間約150例の大腸癌患者さんの手術を施行しています。
内視鏡外科技術認定医(大腸)が3名在籍しており、90%以上の症例で低侵襲手術(腹腔鏡⼿術、ロボット手術)を行なっています。特に、局所進行直腸癌に対しては術前治療(放射線+化学)療法を導入し、生存率の改善ならびに肛門温存の可能性を追求しています。
大腸癌の患者さんは外来受診後、2〜3週間以内に手術を行うようにしておりますが、腸閉塞症状があるなど緊急性がある状態であれば1週間以内に手術を行うこともあります。
大腸癌術後の入院期間は、通常の開腹、腹腔鏡、ロボット手術において術後7〜10日程度となっています。

対象疾患

当科で扱う疾患は、大腸癌を中心とした下部消化管(小腸、結腸、直腸、肛門)の悪性疾患だけではなく、良性腫瘍、虫垂炎、大腸憩室症、クローン病、潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患や腸閉塞(イレウス)に対する外科的治療も行っています。また、痔などの肛門疾患や鼠径ヘルニア等の手術も行っています。

当院の大腸癌外科治療のいいところ

■低侵襲手術を一番に考えていること

当院では低侵襲手術(腹腔鏡あるいはロボット手術)を第一に行うようにしています。(病気の状態によっては開腹手術になる場合もありますが、可能な限り低侵襲手術にこだわっています。)

■チーム医療による迅速かつ丁寧な外科治療が受けられること

⼤腸癌専⾨の外科医、内科医が⼀緒に診るチーム医療で、迅速に⽅針を決めて直ちに治療を開始します。⾼度に進⾏した⼤腸癌でも、集学的治療(化学療法、放射線療法、⼿術)を組み合わせて根治を⽬指しています。

■周術期管理センターによる大腸癌患者さんのサポートがあること

75歳以上の患者さんや中等度以上の持病のある患者さんは術前の早い時期から周術期管理センターが介入し、安全に手術を受けていただけるようしっかりと準備をしています。もちろん、手術後のケアも万全の体制をとっています。

■手術までの待ち時間が短いこと

病期の状態によりますが、当院では外来受診後2〜3週間以内に手術を行うようにしています。大腸癌で腸閉塞症状があるなど緊急性がある状態であれば1週間以内に手術を行うこともあります。

■下部直腸癌に対して集学的治療を行い、可能な限り肛門温存を目指していること

当院では手術前(後)に放射線や化学療法などの集学的治療を行い、可能な限り肛門温存に努めています。

大腸癌に対する薬物療法

当科には、がん薬物療法専門医が2名在籍しており、大腸癌に対する薬物療法(抗がん剤)を積極的に行っています。年間約100〜140名の患者さんに、のべ1000回あまり薬物療法を施行しています。大腸癌の薬物療法は、遺伝子型によりレジメンが決まります。最新の知見に基づき、それぞれの患者さんに最も合った薬物療法を行います。また、がん遺伝子パネル検査を行い、新しい薬を積極的に投与しています。切除不能な大腸癌でも、薬物療法が効けば切除できるかも知れません。その可能性を拡げる薬物療法を行います。

大腸癌 患者数と総コース数の推移

大腸癌 患者数と総コース数の推移

炎症性腸疾患(IBD)に対する外科治療

2016年よりIBDセンターが発足し、順調に患者数も増加してきておりましたが、2020年はCOVID-19のため、手術もままならない時期がありました。幸い、その後コロナの感染対策も軌道に乗り、2021年、2022年はコロナ前と同程度の患者数に落ち着いております。

症例数年次推移

症例数年次推移

当科におけるIBD外科治療の特徴は、毎週開催しているIBDセンターカンファレンスを通じた内科とのシームレスな連携と、患者様の病態に応じた低侵襲治療と考えております。
潰瘍性大腸炎における大腸全摘術は90%以上は腹腔鏡で施行しております。近年では低年齢化と高齢者の症例、両極で増加傾向であり、腹腔鏡手術は若年者に対しては美容的な意義を、高齢者に対しては低侵襲の意義があり、積極的に推進しております。全身状態の悪い症例に対しては、安全性を重視した3期分割手術も行ないます。高難度術式であるTaTMEによる肛門温存も積極的に行なっております。 HGD、Cancer、難治、劇症と多様化する潰瘍性大腸炎の病態に応じて最適な外科治療を提供できるよう努力しております。
クローン病における腸管切除においても、腹腔鏡下あるいは4〜5cm以下の開腹を併施する腹腔鏡補助下手術を原則としており、70%以上の手術を腹腔鏡により行なっています。また、定型的な手術は可能な限り単孔式手術を行い、若年者の多いクローン病で整容性に最大限配慮した手術を行なっています。再手術症例や瘻孔形成症例に対しても、それだけで開腹手術の適応とすることはせず、術前のエコーマッピングなどを駆使して、可能な限り鏡視下手術の可能性を探って適応を決定しております。腹壁の瘻孔形成症例や痔瘻における直腸切断術などでは、術後感染が問題になることが多いですが、陰圧閉鎖療法を駆使して、入院期間や傷の治癒期間の短縮に勤めており、患者様の早期社会復帰に少しでも貢献できるよう努力しております。

遺伝カウンセリング外来

近年のゲノム医療の進展に伴い、遺伝性腫瘍の可能性を指摘される症例が増加しています。当科では、臨床遺伝診療科と共同で遺伝性大腸癌の専門外来(毎月第2・4木曜日午後)を開設し、臨床遺伝専門医や遺伝性腫瘍専門医が、遺伝カウンセラーとともに診療にあたっています。